「おもひでぽろぽろ」は1991年に公開されたスタジオジブリ制作の劇場アニメで、主人公タエ子(27歳)がある日、田舎を持つことを憧れていた小学生時代を思い出しながら、山形県にある姉の夫の親類の家へ旅に出る物語です。この物語の中で、主人公が関心を寄せる男性と共に山形県高瀬地区にある紅花畑に訪れ、紅花農家を手伝う場面が描かれています。朝日昇るころ、露にぬれて輝く黄金色の紅花畑はこの映画の中心的な印象に残るシーンです。
この山形県高瀬地区と白鷹町は毎年7月上旬に紅花まつりが華やかに行われており、このお祭りが終わると紅花の収穫が2〜3週間の間に一気に行われます。
白鷹町は、高瀬地区から車で東へ約30分離れた最上川沿いあり、昔から紅花収穫が盛んな地区であります。最上川周辺の気候と土壌が、良質な紅花の生産に適しており、安土桃山時代頃に伝わった紅花栽培技術が受け継がれています。
ひと花ひと花を手積みで収穫を行います。花には刺があるため朝露でまだ少し柔らかいうちに朝早く作業が行われます。
日本の紅花生産は山形県産がほとんどを占めますが、生産者の少数化、天候に左右されることもあり量の確保が近年難しくなっております。しかしながら、染料の質の高さから紅花から生まれる唐紅は世界からも現在注目されており生産を増やせるよう努力を重ねているとのこと。日本の伝統の赤、Japan Redですね。紅花の歩みや魅力を知るには、白鷹町にある紅花(はな)の館「白鷹紅の花を咲かせる会」を訪れるのもいいでしょう。事務局長の今野さんはじめ会の皆様が温かく迎えてくれます。
実は紅花「べにばな」は、「コウカ」とも呼ばれ、薬(生薬)としても昔から日本で愛用されてきました。一般的には冷え性・血色不良の効能ですが、最近では私達の健康や美容に様々な働きがあるという研究が発表されています。
さて、「おもひでぽろぽろ」の主人公は、東京から寝台特急「あけぼの3号」に乗って山形へ向うのですが、現在では、山形新幹線つばさで約2時間40分ほど、私たちの子供の頃を思い浮かべながら旅するのもよいでしょう。JR山形駅は、映画の舞台になった頃よりすっかり新しくなりましたが、仙台と山形を結ぶ仙山線は、高瀬地区を抜ける電車や情緒ある駅は、今も変わらず思い出を繋いでくれることでしょう。