漢方による糖尿病に対するアプローチ
糖尿病治療の原則は食事療法と運動療法であり、高血糖が高度であれば血糖降下剤やインスリンなどの薬物療法になります。
漢方治療は軽度糖尿病で投与する場合もありますが、漢方薬の持つ血流改善作用や抗酸化作用などに期待して合併症予防を考えることが多いです。もちろん長期にわたり合併症を免れている方や合併症の進行がある場合など個人差はあり、今後もエビデンス(根拠)となる研究が引き続き必要となります。
糖尿病に対しする漢方薬
- 八味地黄丸(はちみじおうがん)…のどの渇き、尿の回数多い、疲労感、腰痛などがある。糖尿病では、よく使用される漢方薬です。
- 防風通聖散(ぼうふうつうしょうさん)…ぽっこりお腹、腹部周りの皮下脂肪が多い人の便秘症
- 大柴胡湯(たいさいことう)…体格はしっかりしているタイプの習慣性便秘。胃炎、肩こり、頭痛、肥満症、高血圧
- 白虎加人参湯(びゃっこかにんじんとう)…比較的体力あり血色もよくのどの渇きと尿回数多い
- 清心蓮子飲(せいしんれんしいん)…インスリンが働きにくい状態を改善する
糖尿病合併症に対する漢方薬・神経障害
- 疎経活血湯(そけいかっけつとう)…しびれ、痛みがあり、特に腰から下に現れたもの
- 牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)…しびれ、痛み。八味地黄丸(はちみじおうがん)に牛膝(ごしつ)車前子(しゃぜんし)が加わった処方
- 桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)…牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)や八味地黄丸(はちみじおうがん)で胃もたれ食欲不振を起こした人に用いる
糖尿病合併症に対する漢方薬・網膜症
- 桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)…瘀血のタイプの人で、単純性網膜症の場合。増殖性網膜症は、却って出血を促す可能性もあるので避ける方がいい
- 八味地黄丸(はちみじおうがん)…のどの渇き、尿の回数多い、疲労感、腰痛などがある。網膜症、白内障。
- 温清飲(うんせいいん)…黄蓮解毒湯(おうれんげどくとう)に四物湯(しもつとう)が加わったもの。糖尿病の眼底出血に広く用いられる
糖尿病合併症に対する漢方薬・腎症
- 清心蓮子飲(せいしんれんしいん)…頻尿を伴うタイプ
- 当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)…糖尿病に限らず慢性腎炎にも広く用いられる。虚弱体質で貧血傾向。
- 柴苓湯(さいれいとう)…柴胡湯(さいことう)と五苓散(ごれいさん)を合わせたもの。糖尿病性の早期腎症に対して有効な報告あり